綺麗だけど割れてしまいそうだと分かっていた

5/1 曇りのち雨
雨の降り落ちる音が好きだ。
午後からだんだんと雲行きが怪しくなってきていた空模様も、夕方には雨が降ってきた。丁度降り始めに外に出ていた私は「やっぱり持って来ればよかった」と去年の誕生日に妹が贈ってくれた傘を持ってきていないことを考えた。でも、雨に濡れるのはなんだか楽しくもある。

ariの曲_rain on me「let it wash away my sins」
__私の罪も洗い流して
雨が落ちて降りかかってくるのを感じている時、この歌詞を思い出す。雨と一緒に私の罪も一緒に洗い流してほしい。流れていった雨が、頬を伝う雫と一緒くたになって、そのまま、私をもう一度真っ白に戻して、と。

雨の日に思い出すことがもう一つある。
高校時代、傘を持ってくるのを忘れた3人の少女達は、全身ずぶ濡れになりながら、首から募金を呼びかける箱を抱え街中を駆け回った。雨が降ってきた時点で学校へとすぐに引き返さなかったのは、それがもう、とても楽しかったからかもしれない。
3人とも学校へと戻った時にはひどい格好になっていた。お風呂上りのように髪がびしょびしょで、制服が絞れるほどずぶ濡れで、下着まで雨が侵食していた。あんなにずぶ濡れになって駆け回ったのに、募金額が対して多くなかったのはご愛嬌だ。

きっと、これはこれからも忘れられない記憶の一つだ。なぜなら、あの時私が最も大切な友人でいたいと思っていた人たちと共有した大切な思い出だから。

 

 

会いたいと思える人がいることはとても幸せなことだ。

私はもう、実家には戻って住むつもりはないけれど、時々母と妹を抱きしめたいと思う。(ただし母が黙っている間だけ。彼女が口を開くと決まってお説教が始まる。)

 

 

あの時の約束はまだ有効なのだろうか。

私は時々、そのことを考える。
今はもう手にできないからこそより一層、忘れることもできない思い出は痛みとなって何度も私の脳裏に蘇る。
依然として囚われたままの私は、未だにあなたと選んだ飾りを外せずにいる。きっとあなたはとっくに外してしまったでしょう。
拭えない悲しさも忘れられない思い出も信じていいのかわからなくなってしまった約束も脳裏に焼き付いて離れない温もりも愛していることに気がつかなかった時間も、今ならわかる。私はこれからもこの愛おしい全てを胸にうちに抱えて泣いていたいのだ。
きっとあの時から分かっていた。綺麗だけど割れてしまいそうだと。
そうならないために近づくことが怖かった。近づいて拒絶されることを恐れた。
そしてふと思う。もしかしたら、彼女はあの時、私と一緒に死んでほしかったのかもしれない。彼女の精一杯の叫びに恐れずに触れ、同じように私の精一杯の叫びを彼女に晒け出せば、あるいは____。